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C01 迷い人の道標

真っ黒で何も見えない。
出口のないトンネルに、入り込んでしまったかのように、先が見えない。
ただ足下から、前へ真っ直ぐへ続いていく白い道。
それと自らの身体だけが暗闇の中で浮き出るように、何故かはっきりと見える。
何処にこの道は向かっているのか。
分からない。
後ろを振り返り、歩んできた白い道を見る。
その道もまた、どこから始まったのか分からないほど遠くまで細く細く伸びている。
顔を前へむき直して、また一歩を踏み出す。
終わらない真っ黒な道。
そこを私は1人で何処まで進むのだろうか。
……─でも。
行かなければならないと感じる。
進む足は止まらない。
何処まで行くのか分からない。
何処に行くのか分からない。
何故行くのか分からない。
分からない、分からない。
ただ、この道を行かなければならないと思うのだ。
私の進むべき道。
この先に“ある”のだ。
きっと、──…



ボーッと醒めたばかりの目を薄く開いて、視界に映る空の青と風に揺られてサラサラと動く木の緑を見上げた。
地面に寝ころんでいるので草がこそばゆく頬や首筋をくすぐる。
土と草の匂い、撫でる風が心地よかった。
まだ覚醒しきっていないだるい身体を起こして、グッと伸びをする。
ふーっと息を吐きながら身体から力を抜くと、何とも言えず心地よかった。
コキコキと首をならしながら晴れた空を見上げて目を細める。
先ほどとはまるで正反対な晴れやかな景色。
…─夢、か。
そう思い、首を傾げた。
あの妙な使命感は何だったのか。
急かすように感じて、繰り返していた“行かなければ”という言葉。
考えを巡らせながら、後ろ手に地面に手を突いて上半身を支える。
手を突いたときの手に伝わった感触に、そこに視線を移す。
「…ぁ」
そして視線を向けた先に、小さな花が咲いていて。
と言うよりもその白い花はこの近くの一面、木のないところに咲き誇っていた。
自分が花の中に埋もれるように寝ていたのに気がついて目を細める。
そしてそのまま空に視線を戻して目を瞑った。
風が頬を撫でて通りすぎる。
日の光が暖かく身体に注いだ。
木々の葉が風に揺られてサラサラと音を立てる。
咲く花もまた揺れて手をくすぐった。
…──気持ちい、…い?
そう思ったところでパッと目を開いてパチパチと瞬きを繰り返した。
キョロキョロと辺りを見回して目を見開いた。
「…夢?」
確かに、自分の部屋で寝たはずだ。
なのに何でこんな所に居るんだろうか…。
…─周りは一面、茂った木々に囲まれていた。
そしてその少し広く木のない空いた場所に花が咲き乱れ、私はそこの中央に1人座り込んでいた。
「変な夢を見たから?」
ぽつりと呟くとそんな気がしてきた。
あのやたらと使命感に押し寄せられる夢。
あの使命感に従ってあの長い道を歩いたからここにたどり着いたのだろうか。
だったらこれはあの夢の続きなのだろう。
うん、そうしよう。
その方が希望がある気がする。
それにしてもなんだか覚えのある展開だ。
良く小説とかである異世界トリップもの。
気がついたら見知らぬ場所でした。
うん、それっぽい感じ。
現実が辛くて逃避しちゃったんだろうか。
逃避するほど辛いことなんかあったっけ?
気がつかないうちに追い込まれていたのなら大変だ。
知らないうちに精神を病んでたとかしゃれにならない。
そう考える自分をふむふむと観察し小さく首を傾げた。
意外と自分は落ち着いている。
普通こんな事になったら人は発狂するんじゃないだろか。
そこまで行かなくても泣き叫ぶとか。
不安に陥るとか。
パニック起こすとか。
と言うよりも今こんな事を考えている時点で少しは寝起きの頭なりに冷静にものを考えている。
また小さく首を傾げて空を見上げた。
風が頬を撫でて通りすぎる。
…─何というか。
「…落ち着く?」
声に出してみて、それがストンと心に落ちた。
うん、うんそうだ。
落ち着く。
何て言うんだろう、安定した感じって言うか、無かったものを手に入れた感じ?
よく分からないけど、そんな感じだ。
それにしてもここは……─
フッと、巡らせていた思考が途切れる。
音が、した。
葉がこすれる音。
風とかに揺すられて出る音じゃない。
これは…
音の方向へ首を巡らせようとして、止める。
息を詰めて体中の動きを止めた。
「…貴様、一体何処から侵入した!」
男の低い、声。
そして動きを止めさせてるのは、首元に触れている感触だった。
ヒンヤリとした、硬く細いものが触れている。
そろりと、視線を下げるとその先に、鋭く光る鉄のかたまりの先が見えた。
声を詰まらせて思わず身を引けば、逆にそれは押しつけられ、鈍い痛みが首に走る。
そしてツーッと何か液体が首を流れる感触がした。
冷や汗を、たらりと流す。
…これは、一体何?
頭が真っ白になる。
この非現実的なものは、…─あり得ない。
あり得ない、あり得ない。
何でこんなものが。
耳元でチャキと鉄の鈍い音がする。
何でこんな、
「答えろッ!ここは王族の庭だぞ、どうやって侵入した!?」
耳元で低い脅すような男の怒鳴り声が響く。
しかし、内容が理解できない。
何、何なの。
首に突きつけられた冷たいそれ─…剣、がさらに押しつけられるのを感じた。
目に映る冷たい鉄を、赤い、赤い液体が一筋流れて先端からぽたりと落ちる。
「ぁ、っあ」
目を、見開いてそれを信じられない思いで見つめた。
血、血だ。
血が流れている。
誰の?
─…私の。
「……聞こえていないのか、答える気がないならこの場で殺す」
急に、激しかった声が静かに落ち着きを取り戻す。
ただその低さと重みを増して。
背筋を悪寒が駆け抜ける。
…剣、血、怒声、…殺、す?
何を言って居るんだろう、この人は。
人を殺すのは、犯罪だ。
なのに、何故こんなにも容易く殺すと言うのだろう。
いや、でも分かっている。
この人は殺すだろう。
言葉の通り。
ここで、侵入者を殺すのに何故罪が問われる?
…──そう、当たり前なのに…?
ハッとして息を詰める。
“ここ”?
ここが何処だって言うのか。
知らない、知らないはずなのに自然に浮かんだ言葉は消えず。
「意地でも答えない気か…」
首にまた、するどい痛みが走る。
恐怖が身体を震わせる。
いや、嫌だ痛い。
怖い。
知らない。
訳が分からない。
ここは何処。
この人は誰。
これは一体何。
嫌だ、怖い。
誰?誰か
「…た、すけ」
「何?」
低い声が響く。
誰、だれ?
違うの、ちがう、いいえ、あってる
…誰か、ちがう。
ゴチャゴチャと思考が巡り、頭の中で沢山の言葉が浮かぶ。
何を考えているのか自分でも良く分からなくなっていく。
…誰か、助けて。
助けて、たすけて。
父さん、母さん。兄さん、誰か。
いろんな顔が頭をよぎる。
また耳元でカチャリと音がした。
「何だ?命乞いか?」
低く嘲笑するような軽蔑するような響きを持った言葉が容赦なく落とされる。
だれ、だれ。
だれかたすけて。
早く、どうしてきてくれないの?
一瞬、誰かの顔がよぎる。
見覚えのない筈の何故か懐かしい顔。
そのよぎった顔が、何故か大切な、忘れてはいけない気がして。
少し長めの金の髪に、深い青の瞳。
そう、彼は良くその目を細めて静かに笑っていた。
知っている、彼は誰?
矛盾した感情がぐるぐる回る。
ただ、とても大切な人。
…いつもたすけてくれるのに。
どうして来てくれないの。
「…たすけて」
チッと苛立つような舌うちが聞こえた気がした。
首元に添えられていた剣がゆっくりと離される。
それが、どんな意味を持つのか、頭の隅では理解していた。
…──ねぇ、1人にしないで。
「ァ、イル…」
途端に口に出でた誰かの名は誰の物か。
ただ名前を出して思い浮かぶのは、あの青い瞳で。
あぁ、彼の名なのだ、と理解する。
「アイル、たすけてアイル」
口に出したら、止まらなかった。
淋しい、さみしいの、1人にしないで。
思い出す、柔らかく細められた優しい青い瞳。
ゆっくりと髪を撫でていく大きな手。
いつも守ってくれた広い背中。
大切な、大切な人だと心が叫んでいた。
…彼は、どこ──?
ガッシャンと大きな音がした。
あまりに大きな、不釣り合いな重い金属が落ちた音。
「─…どこで、その名を聞いた」
静かな声だった。
その声で、何処かぼんやりとしていた意識が戻って来る。
頭の中の、言葉も止んだ。
首を、血が流れていく感触を鮮明に感じる。
ドクドクと傷が疼く。
でも、そんなことはあまり重要には思えなかった。
剣はもうそこに突き付けられては居ない。
背筋を凍らせる様な恐怖はいつの間にかもう感じていなかった。
あるのは見つけてしまった淋しさと。
「なんで、その呼び名を知っているんだ」
何処か唖然としたような声。
さっきまでの鋭さは姿を消していた。
でもその強さは残したまま。
何でそんなことを聞くんだろう。
これは彼の名前なのに。
でも、強い響きを持つのに何処か助けを求めるようなその声に、顔を見たいと思ったのは何故なのか。
見えたのは大きく目を見開く男の人。
その人の顔に、彼の顔が被った。
長い金の髪は後ろで一つにまとめられ、深い青の瞳は見開かれていた。
その目を見た途端、包まれた安心感は何なのか。
しかし、思い出してしまう。さっきまでは自分を殺そうとしていた人物は、間違いなくこの人なのだ。
そう思ってもその瞳から目を離すことは出来なかった。
「シル、ヴィオナ…?」
驚いた顔のまま、確かめるように呼ばれた名前は一体誰の名なのだろう。
聞いたことの無いはずの、その名前は、何処か懐かしく感じた。
ゆっくりと、その大きな男の人の手が伸びてくるのが視界に映る。
その手がさっきまで剣を握っていたのだと思うと、無意識に身体が震えた。
ピクッと伸ばされていた手が戸惑うように一瞬止まる。
でも直ぐにまた動き出して、手がゆっくりと頬を包むのを感じた。
振り払う気には、なれなかった。
何より、もう傷つける気がないのを知っている。
さっきまでその手で握っていた剣は彼の後ろに横たわったまま。
それを何処かぼんやりと遠く見ていた。
「…シオン、なのか」
名前を呼ばれて反射的に顔を上げる。
見つけた彼の顔は酷く泣きそうな顔をしていた。
どうしてそんな顔をして居るんだろう。
あぁ、それより何で名前知って居るんだろう。
名乗った覚えはないのに。
頬を硬い手が優しく滑る。
その動きは、何か確かめているようだと頭の片隅で思った。
手から伝わる体温は、凄く優しくて。
不意に動いていた手が、ピタリと止まる。
視線を向ければ、彼の視線はジッと首筋を見ていた。
手が、思わずと言ったようにそこに触れる。
「ッゥ…」
鋭く走った痛みに、思わず息を詰まらせて声を漏らした。
その途端、彼の顔がさらに泣きそうに歪んだきがした。
でも、確かめることは出来ず。
─…彼の腕が、身体に回り、包み込むように抱かれた。
傷口がまたふれて、思わず身を捩る。
その自身の動きも、不意に止まった。
「─…ごめん」
もう本当に泣いしまったのかと思うほどにその声は弱々しくて。
逃げようとしていた身体は動かない。
「ごめん、ごめん」
許しを請うように、懺悔する様な声がなんども響く。
その声を冷える指先を感じながら何処か遠くで聞いた。
でも、何処かでこんな事が昔あった気がすると、思う。
──その時も確か彼はこんな風に泣きそうになんども謝っていた。
あぁ、そうか。
やっと気が付く。
─…この人は“彼”なんだ。
「…大丈夫」
思っていたよりも、しっかりとした声がでる。
ピタリと、彼の声は止んだ。
私の声に耳を澄ましているのを感じる。
彼の顔は、あの瞳は、見えない。
変わりにぼんやりと、彼の服に染みこんでいく赤い血を見つめた。
真っ赤に染まっていく服に、随分と血を流しているのを感じ。
頭がぼんやりしているのはそのせいかと思う。
きっと、貧血になってきてる。
「大丈夫だよ、アイル」
意識が霞む。
凄く、眠かった。
最後に、きっと笑えたと思う。
見えたのは泣きそうに歪んだ、でも優しい青い瞳だった。
それを見てからゆっくりと目を閉じた。

不意に、腕にあった重みが消える。
自分を見つめていたその瞳が消えた。
思わず唖然と己の腕を見下ろす。
そこにはさっきまで居たはずの彼女の姿は、元から無かったかのように無くなっていて。
違う、目を彼女はゆっくり閉じた。淡く笑みを浮かべて。
そうしたら途端に、彼女は消えた。
一瞬にして、居なくなってしまった。
戻ってきてくれたのだと思ったのに。
──傷つけてしまったからか。
気がつかなかった、彼女だと。小さくともその声を聞いたのに。
彼女の髪は、金だった。
しかし今の彼女の髪は黒く。
緑の柔らかい瞳も黒くなっていた。
しかし見間違うはずがない。
色は違ってもあの顔は、声は、笑みは、間違いなく彼女だった。
確かに、彼女はここにいた。
ふと視線を落とし、己の服が血に染まっているのを見つけ、ギュッと服を掴んだ。
確かに、いたんだ。
「……ィオル…か」
不意に、己の護衛の声が聞こえ、顔を上げる。
予想通り、背後でガサガサと音がした。
気配で、立ち止まって深く礼をしているのを感じた。
「アヴィオル殿下」
その声がはっきり聞こえ、スッと立ち上がる。
護衛の男は既に顔をあげ、怪訝そうにこちらを見ている。
「どうかなさいましたか」
「何でもない」
淡々と言うが、服の血に気がついたのかヒュッと息を飲む音が聞こえた。
「お怪我を…っ、侵入者ですか!?」
腰の剣を引き抜こうとするのを、目線で押さえる。
護衛は、身体の動きをピタリと止め剣からゆっくりと手を離す。
それを見て、言葉を吐き出した。
「違う。これを漏らすことは許さない。
 …それで、どうした。ここに踏み込む許可を俺は与えていない筈だが」
その言葉に護衛はハッとしたのか姿勢を正した。
ここは王族の庭。
王族と王族に許可を与えられた者にしか踏み込むことは許されない場所。
だからこそ、ここは厳重な警備が成される。
「殿下、王がお呼びです」
「分かった、着替えてから向かう。良いなこのことは他言するな」
一度釘を刺してから、小さく行けと命じる。
はっと威勢の良い声を出し、護衛は急ぎ足に舞い戻っていった。
1人になった庭で、ジッと咲き誇る白い花を見渡す。
そして彼女を思い出すと、ゆっくりと目を閉じた。



フッと、意識が浮上する。
不思議な感覚。
神経が身体の隅々まで巡っていく。
指先が、ゆっくりと動く。
それを感じて、ゆっくりと目を開けた。
──そこは真っ暗な闇、その中に唯一尊大を主張するようにある真っ白な道にただ1人私は立ちつくしていた。
また、ここだ。
そして思い出す。
森の中。
剣。
血。
青い瞳。
…アイル。
ハッとして、首元を押さえるが、そこに血が流れていることはなく。
なんど触っても傷口は存在していなかった。
指先も温かく血が通っている。
視線を首元から前へと移す。
そこに続くのは先の見えない闇に浮かぶ真っ白な道。
なんとなしに、その一歩を踏み出した。
そのまま先に歩き出す。
そして、さっきとは違う。
何かが遠ざかっていく気配。
フッと、後ろを振り向く。
闇の中に浮かぶ長い長いどこまで続くのか分からない白い道。
今ここを引き返しても戻ることは出来ないような気がした。
…どこに戻るのか。
また分からなくなる。
今日は混乱しっぱなしだ。
──今は、進むことだけを考えよう。
道は続く。
この道はどこに向かうのか。
どこに続いて、どこで終わるのか。
遠ざかっていく。
それを感じてゆっくりと、目を瞑った。
目蓋の裏にあの青い瞳が見える。
アレは何だったのだろう。
彼、はアイルは…何故その名前を知っていたのか。
そう思ったとき。
目蓋の裏で、何かが光った気がした。



ピピピと目覚ましの音が聞こえる。
うっとうしさに眉を寄せて、ゆっくりと身体を起こした。
バシンと目覚ましを止め、静かさが戻るが、ベットから出る気になれずにぼんやりと天井を見つめた。
──私の、部屋だ。
それを天井についたシミで確認して、なんとなしに部屋を見渡す。
間違いなく、自分の部屋。
何だったのだろう。
本当に夢だったのか。
しかし、首を触っても傷はどこにも無い。
あまりにリアルすぎる、そして訳の分からない夢だった。
わいた感情も、見ていたものも。
とても現実とは思えなかった。
ただ、違和感を感じる。
今このときに。
夢の中にいた時の緩い安定感は無い。
ふと、時計を見てその時間に目を見開く。
「遅刻──っ」
バタバタと制服を引っ張り出して、急いで着る。
寝癖は、幸運な事にあまり酷くなかった。
「紫苑ー、遅刻するわよー」
一階、から母の声が響く。
いつも通りの日常。
「分、かっ、て、る──っ!!」
バタバタと階段を駆け下りる。
チラリと時計を見ると、走っていかなければ完全にアウトな時間だ。
朝ご飯を食べている時間はなかった。
バンッと玄関を勢いよく開いて、家の中の母に叫ぶ。
「行ってきまーすッ」
「いってらっしゃい。気を付けるのよー」
「はーい!」
そして、出来る限りのスピードで家を飛び出して、学校へと向かう。
朝の喧騒に紛れても、違和感は消えてはくれない。
消えない違和感を抱きながらも、彼女は日常に戻っていった。
思い出すのは、やはりあの深い青の瞳だった。



数多の世界。
文化、文明、人種、環境、時間の流れまでもが違う数多の世界。
魂は一つの世界に囚われて、その世界で転生を繰り返す。
魂は人として死に、そしてそう時間を掛けず直ぐにまた人として地に生まれ落ちる。
天に長らく止まることはなく、短い生を途切れることなく繰り返していく。
ただ時たま現れる。
魂の迷い人。
迷い人は縛られるはずの一つの世界からはぐれ出て、他の世界へと紛れ込む。
他の世界の魂は完全にその世界に馴染むことはなく、前の世界の名残を残す。
迷い人は世界へ戻る。
その為の道。
道を見つけた迷い人は、己のあるべき場所へと帰る。
迷い人のための道。
それで繋がる、数多の世界。
心が引かれ、必ず戻ることになるだろう場所。

彼女は気がつかない。
自分はもうその道標を見つけたことに。

彼女はいつ戻ることが出来るのか。
彼はいつ彼女を取り戻すことが出来るのか。

時はいつ。
彼女は二つの世界と干渉し、二つの世界は重なった。
道が繋がり、光が灯る。
時の流れは重なり、過ぎていく。

迷い人は道を行く。
己の世界へと、本当の居場所へと帰る道。

C01 迷い人の道標
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